スペック表に書いていないことを、20年やってきた人に聞きました
パソコンについて調べると「メモリは16GB」「Core i7がおすすめ」「SSDなら速い」といった話が出てきます。どれも間違いではありません。ただ、毎日壊れたパソコンを見ている人からは、別のものが見えています。
話を聞いたのは、名古屋市北区で20年パソコンショップを営む店主です。PC Terrace の運営元でもあります。その関係は広告と運営についてに書いています。特定の商品をすすめる話は、この記事には出てきません。
20年で、故障の中身が変わった
Q. 20年間で、いちばん多い故障は何ですか。
時代によって変わっています。以前はHDDの故障が非常に多かったです。「Windowsが起動しない」「ものすごく遅い」「カチカチ音がする」と持ち込まれて調べると、HDDが原因、というケースを何度も見てきました。
最近はSSDが増えたので、昔ほど「HDD故障ばかり」ではなくなりました。その代わり、バッテリーの劣化、Windowsの起動不良、アップデート関係、液晶やヒンジ、電源まわりと、相談の中身が散らばってきた印象があります。
あと、「故障だと思って持ってきたら、実際にはWindowsやドライバー、ネットワークなど設定側の問題だった」というのもかなりあります。ですから、症状を聞いただけで部品交換を決めることはしません。ハードの故障なのか、Windowsなのか、設定なのかを切り分けるのが先です。
これは危ない、と思うパソコン
Q. 20年間で、いちばん危なかったパソコンは。
怖いと思うのは、バッテリーが大きく膨らんでいるパソコンです。「タッチパッドが押せない」「キーボードが浮いてきた」と持ち込まれて、開けるとバッテリーがかなり膨張していることがあります。外から見ると少し筐体が膨らんでいるだけなので、そのまま使い続けている方もいます。
もうひとつは、焦げ臭い、異常に熱い、電源まわりがおかしいという症状です。
データも大事ですが、安全に関わる症状は別扱いです。使用をやめて、その状態のまま相談してください。ここだけは、データより先に判断してほしいところです。
膨らみに気づいたときの見方は、ノートパソコンが充電できないときの確認手順にも書いています。
SSDは、前触れなく止まる
Q. SSDは突然壊れますか。
壊れます。ここは、HDDとの大きな違いです。
HDDは、異音がする、動作が極端に遅くなる、といった前兆が出ることがあります。いっぽうSSDは、それまで普通に使えていたのに突然認識しなくなることがあります。状態を確認する方法はありますが、「健康状態が良いから絶対に壊れない」とは言えません。
だからこそ、SSDになってもバックアップは必要です。「SSDだからデータは安全」という考え方は、おすすめしません。
Q. HDDとSSD、データを取り出しやすいのはどちらですか。
一概には言えませんが、壊れ方が違います。HDDは物理的にディスクが回っているので、異音や読み取りの不安定さとして出てきます。SSDは半導体に記録しているので、壊れるとまったく認識しなくなることもあります。
どちらにしても、大切なデータが入っているなら、異常を感じた時点で使うのをやめることがいちばん効きます。取り出せるかどうかの分かれ目は、パソコンが起動しない。データは取り出せるのかにまとめています。
メーカーで壊れやすさは違うのか
Q. メーカーによって壊れやすさは違いますか。
よく聞かれます。20年いろいろなメーカーを見てきましたが、「このメーカーは壊れる」「このメーカーなら絶対大丈夫」とは言い切れません。
同じメーカーでも、シリーズや価格帯で設計が違います。それに、家庭で1日1時間使うパソコンと、会社で毎日8時間使うパソコンでは条件がまったく別です。
Q. では、故障する場所に傾向はありますか。
それはあります。「このシリーズでは、この部分の故障をよく見る」と感じることはあります。ヒンジのまわりが弱い機種、電源端子に負担がかかりやすい構造、冷却が厳しい薄型モデル、といった具合です。
ただこれは、メーカー全体というよりそのシリーズや筐体の設計の話として見るほうが正確です。同じメーカーでも、業務向けと家庭向けの安いシリーズでは作りがかなり違います。中古を選ぶときにメーカー名だけでなくシリーズまで見る理由は、ここにあります。
丈夫だったのは、どんな機種か
Q. 20年見てきて、いちばん壊れにくかったタイプは。
個人的には、法人向けのビジネスノートに丈夫な機種が多い印象があります。毎日仕事で使う前提で作られているので、派手さはなくても筐体、キーボード、端子まわりがしっかりしているモデルがあります。
中古市場には、法人で使われていたパソコンが多く流通します。もちろん法人向けなら全部丈夫、という意味ではありません。ただ、中古で実用性を優先するなら、候補に入れます。
Q. 薄くて軽いパソコンは壊れやすいですか。
必ず壊れやすい、とは言えません。ただ、薄くするために内部がかなり詰まっています。部品交換や修理がしにくいモデルがありますし、メモリが基板に直付けで増設できないこともあります。バッテリー交換が簡単ではない機種もあります。
買うときは、薄さや軽さだけでなく、数年後に修理や増設ができるかという見方も持っておくといいと思います。
この記事で触れなかったこと
スペックの選び方や、修理と買い替えの判断は、それぞれ別の記事にまとめています。
- 用途別PCスペック早見|メモリは8GBで足りるのか、CPUの世代とは何か
- パソコンはどこで買う?|中古で見るところ、Officeの落とし穴
- Windows 10を延命するか、買い替えるか|直す価値があるかの判断
- データは取り出せるのか|分かれ目と、BitLockerという壁
第2回「中古パソコンの、見るところ」では、仕入れたときに最初にどこを見るのか、SSDの何を確認するのか、そして「修理屋が自分用に買うなら何を買うか」を聞きました。
故障の中身は、この20年で変わりました。HDDが中心だった時代から、原因が散らばる時代へ。そしてSSDは前触れなく止まります。「SSDだから安全」ではありません。
もうひとつ。異臭、煙、バッテリーの膨らみ、異常な発熱。この4つだけは、データより先に、電源を入れないという判断をしてください。
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