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UPS(無停電電源装置)の選び方
オフィスで本当に見るべき3項目【2026年】

UPSは「停電に備える箱」ではなく、電気が切れる瞬間を数分ぶん先送りして安全に終了させるための装置です。容量・出力波形・交換バッテリの3点と、給電方式という4つ目の見方。修理の現場で見てきた電源まわりの壊れ方とあわせて解説します。

事務所の机の下、デスクトップパソコンの脇に置かれたUPS(無停電電源装置)
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UPS(無停電電源装置)を「停電に備える箱」だと思っていると、選び方を間違えます。停電のときに数分だけ電気を持たせる機能は、UPSの仕事のうちの一部でしかありません。

オフィスで実際に効いてくるのは、停電にならない程度の電圧のゆらぎ——落雷のあとの一瞬の電圧低下、エアコンやコピー機が動いたときの瞬間的な落ち込み——をUPSが吸収して、パソコンやNASに届けないでいてくれることです。ここを踏まえないと、容量と値段だけで選んで、いざというときに役に立たない1台を買うことになります。

最初に結論

見るのはこの3つだけで足ります

  1. 容量——つなぐ機器の合計Wと、何分持たせたいか
  2. 出力波形が正弦波か(矩形波・疑似正弦波は避ける)
  3. 交換バッテリの型番・価格・交換手順が公開されているか

デザインや通信機能は、この3つを確認したあとで比べれば十分です。順番を逆にすると、3〜5年後に「捨てるしかない箱」になります。

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停電より多いのは「一瞬の電圧低下」

地域まるごとの停電は、そう何度も起きません。それより頻繁なのは、気づかないうちに起きている電圧のゆらぎです。落雷のあとに照明が一瞬暗くなる、大きな機械が動いた瞬間に電圧が落ちる。時間にすれば1秒に満たない現象ですが、パソコンの電源はこれで落ちることがあります。

落ちたときに困るのは、作業中のファイルが消えることではありません。書き込みの途中で電気が切れることです。WindowsのアップデートやNASの書き込み中に電源が飛ぶと、次に起動しなくなることがあります。UPSは、その「切れる瞬間」を数分ぶんだけ先送りして、安全に終了させるための装置です。

逆に言えば、何時間も動かし続けるための装置ではありません。500VAクラスのUPSが持たせられるのは、フル負荷でせいぜい数分です。この前提を持っておくと、必要な容量が現実的な線に収まります。

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判断基準① 容量 ——「何Wを何分」で決まる

UPSの容量は「500VA/300W」のように2つの数字で書かれます。実際に効くのはW(ワット)のほうです。つなぐ機器の消費電力を足して、それがWの数字に収まるかを見ます。

事務用のデスクトップとモニター1枚なら、実測でおおむね100〜150W前後。ここに複合機やレーザープリンタをつなぐと一気に超えるので、プリンタ類はUPSにつながないのが基本です。守るのは、途中で電気が切れると壊れるもの——パソコン本体、NAS、ルーター、録画機——に絞ります。

機器目安の消費電力UPSにつなぐか
事務用デスクトップ+24型モニター100〜150Wつなぐ
NAS(2ベイ)20〜40Wつなぐ
ルーター・ONU・スイッチ10〜30Wつなぐ
レーザープリンタ・複合機数百〜1,000W超つながない

そのうえで「何分持たせたいか」を決めます。人がいる時間帯なら、手を止めて保存し、シャットダウンするまでの3〜5分あれば足ります。無人の時間帯に落ちる可能性があるなら、UPSの信号を受けてパソコンやNASが自動で終了する設定が要ります。この自動シャットダウンまで含めて考えると、必要なのは長い時間ではなく「確実に終了させられる数分」です。

容量ぎりぎりで選ばない

Wの数字ちょうどで選ぶと、バックアップ時間はカタログの最短値になります。オムロン BY50S(500VA/300W)の公表バックアップ時間は300W時で3.5分。同じ機種でも、負荷が半分なら持ち時間は延びます。合計Wの6〜7割に収まる容量を選ぶと、余裕が出ます。

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判断基準② 出力波形 ——「正弦波」でないと止まることがある

UPSがバッテリから電気を送るとき、その電気の「形」には種類があります。コンセントから来る電気と同じなめらかな波が正弦波、それを階段状に近似したものが矩形波(疑似正弦波)です。

矩形波が問題になるのは、最近のパソコン電源やUPS対応NASの多くがアクティブPFCという回路を積んでいるからです。この回路は入力の波形を見て動くため、階段状の波を受けると異常と判断して停止することがあります。「UPSにつないだのに、停電した瞬間にパソコンが落ちた」という話は、たいていここが原因です。

安いUPSは矩形波であることが多く、商品ページでは「正弦波」の記載がないまま売られています。記載がない=正弦波ではないと考えて構いません。今回挙げる2台は、いずれも公式ページで正弦波出力と明記されています。

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判断基準③ 交換バッテリが公開されているか

UPSの中身は鉛バッテリで、4〜5年で寿命が来ます(オムロンの公表値)。本体が壊れるのではなく、バッテリだけが先に終わります。ここで効いてくるのが、メーカーが交換用バッテリの型番・価格・交換手順を公開しているかです。

オムロンは、BY50S用の交換バッテリをBYB50Sとして単品で販売し、価格(メーカー希望小売価格19,140円)も、10ステップの図解つき交換手順も公式サイトに出しています。運転を止めずに交換できることも明記されています。つまり、5年後に何をいくらでやればいいかが、買う前からわかります。

不都合な事実:交換バッテリは本体とほぼ同額です

BY50S本体の実売と、交換バッテリBYB50Sの価格は、ほぼ並びます。「バッテリを替えるくらいなら本体を買い替えたほうが安い」という状況が5年後に来ます。これはオムロンに限った話ではなく、この価格帯のUPS全体の構造です。UPSは5年ごとに買い替える消耗品——そう見積もっておくと、判断を誤りません。

一方、APC RS 550(BR550S-JP)は、公式製品ページに「お客様にてバッテリー交換可能」「システムを停止せず交換可能なホットスワップ対応」と書かれていますが、そのページに交換バッテリの型番までは載っていません。交換できること自体は明示されているので、型番を別途調べる手間がある、という差です。

この「公開しているか」という見方は、SSDのTBWのときとまったく同じです。数字の大小より、メーカーが逃げずに出しているかどうかのほうが、長く使う道具では効いてきます。

もうひとつの見方:給電方式

カタログの隅に「常時商用給電方式」「ラインインタラクティブ方式」「常時インバーター方式」と書かれています。ここが、同じ容量・同じ正弦波でも値段が変わる理由です。

方式ふだんの動き向いている用途
常時商用給電コンセントの電気をそのまま流し、停電したらバッテリに切り替える事務用パソコン・小規模NAS
ラインインタラクティブ常時商用に加え、電圧のゆらぎを内部で補正してから流す電圧が不安定な建物・工場事務所
常時インバーター常にバッテリ経由で作り直した電気を流す(切替時間ゼロ)サーバー・止められない設備

事務用のパソコンなら常時商用給電で足ります。切り替えにかかるわずかな時間は、パソコンの電源が持っている余力で吸収できるからです。オムロン BY50S はこの方式です。

建物の電圧が不安定で、照明がちらつくような環境なら、ラインインタラクティブのほうが安心です。停電していなくても電圧を補正し続けるので、バッテリに切り替わる回数そのものが減り、結果としてバッテリが長持ちします。APC RS 550 はこちらです。

常時インバーターは価格が一段上がります。事務所のパソコンに使うにはオーバースペックなので、この記事では扱いません。

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修理の現場で見てきた、電源まわりの壊れ方

当店はパソコンだけでなく、ビジネスフォンの保守も多く請けています。そのため、地域で何が起きたかが、いただく電話の本数でわかります。

激しい雷の翌日は、決まって連絡が来ます

雷が激しかったあとは、地域のお客様から必ずと言っていいほどご連絡をいただきます。伺うと、壊れているのはビジネスフォンのユニット(基板)と、パソコン関連。1軒や2軒ではありません。

そして毎回はっきりしているのが、UPSを取り付けているお客様からは、ほとんど連絡が来ないということです。当店の中では、もう「あるある」として共有されている事実です。

これは、UPSが雷そのものを止めているという意味ではありません。直撃雷はUPSでも防げません。防いでいるのは、落雷にともなって電線側に起きる電圧の乱れのほうです。この乱れが、電源ユニットや基板の部品を、一度に、あるいは少しずつ壊していきます。UPSは、それが機器に届く前に吸収しています。

ここで見落とされがちなのが、壊れるのはパソコンだけではないということです。ビジネスフォンの主装置、ルーター、複合機の制御基板、録画機。事務所の中で電源につながっていて、中に基板が入っているものは全部が対象です。UPSにつなぐものを決めるときは、パソコンだけを見ないでください。

アラートが鳴ったら、その日のうちに動く

もうひとつ、現場でよくあるのがバッテリーの寿命です。UPSは寿命が近づくとアラートで知らせます。当店では、お客様から「音が鳴っている」とご連絡をいただいたときは、大急ぎで交換対応に伺っています。

急ぐ理由は単純で、アラートが鳴っている間のUPSは、ただの電源タップだからです。設置してあるという安心感だけが残って、中身は守られていない。そして、そういうときに限って雷が来ます。

「音が止まったから直った」ではありません

アラート音は、ボタンで止められる機種があります。止めても、バッテリーが復活したわけではありません。音を止めた時点で、その事実を知っている人が誰もいなくなります。鳴ったら、止める前に機種名と表示を控えてください。

当店でも、使っています

お客様に勧める前に、まず自分のところで使っています。当店ではサーバーの突然の電源断を防ぐためにUPSを入れました。書き込みの途中で電気が切れると、いちばん困るのがサーバーだからです。

この記事に書いていることは、その前提で読んでいただければと思います。

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用途別・この2台での選び方

※この2台は、当店で数年使い込んだ実機ではありません。給電方式・出力波形・交換バッテリの公開状況という、この記事の基準に照らして選んだ製品です。納入して数年後の様子まで見届けたものが出てきたら、そのときに書き足します。

事務用パソコン1台+モニター(いちばん多い構成)

常時商用給電で十分な用途です。オムロン BY50S(500VA/300W・正弦波出力)を基準にします。3年保証に加えてバッテリ3年間無償提供サービスが付き、交換バッテリの型番・価格・交換手順まで公開されている点が、この価格帯では抜けています。出力コンセントは4口、本体は約4.5kgで、机の下に置ける大きさです。

電圧が不安定な建物・工場の事務所

照明がちらつく、大きな機械が動くと画面が一瞬暗くなる——そういう環境なら、電圧を常時補正するAPC RS 550(BR550S-JP)を選びます。550VA/330Wと容量もわずかに大きく、正弦波出力、3年保証、バッテリはユーザー自身でホットスワップ交換できます。

サーバーや、止められない設備

この用途は、ここでは製品を挙げません

常時インバーター方式のUPSは、つなぐ機器の構成と冗長化の考え方まで含めて決めるものです。記事を読んで自分で選べる範囲を超えます。設置環境を見ずに型番だけ挙げるのは無責任なので、挙げません。該当する場合は、機器構成を前提にご相談ください。

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買ったあとに、必ずやっておく3つ

1. つなぐものを選び直す。UPSの背面には「バックアップ対応」と「サージ保護のみ」のコンセントが分かれていることがあります。パソコン本体とNASはバックアップ側、プリンタや充電器はサージ側、と挿し分けます。すべてをバックアップ側に挿すと、持ち時間が一気に短くなります。

2. 自動シャットダウンを設定する。USBケーブルでパソコンにつなぎ、メーカーの管理ソフトを入れると、停電時に自動で終了させられます。無人の夜間に落ちたときに効くのはこの設定だけです。NASの場合は、NAS側の設定画面にUPS連携の項目があります。

3. 警告音の意味を、置き場所と一緒に決めておく。UPSはバッテリ寿命が近づくと音で知らせます。この音を「うるさいから」で放置すると、いざというときに機能しません。誰の耳に届く場所に置くか、鳴ったら誰に連絡するかを、設置と同時に決めておきます。

設置場所で寿命が変わります

鉛バッテリは熱に弱く、周囲温度が高いほど寿命が縮みます。複合機の横、直射日光の当たる窓際、密閉したラックの中は避けてください。公表されている4〜5年という寿命は、常温での話です。

まとめ

UPSは「停電に備える箱」ではなく、電気が切れる瞬間を数分ぶん先送りして、安全に終了させるための装置です。そう捉えると、必要な容量も、優先順位も自然に決まります。

  1. 容量はつなぐ機器の合計Wの6〜7割に収まるものを。プリンタ類はつながない
  2. 出力波形は正弦波。記載がなければ正弦波ではないと考える
  3. 交換バッテリの型番・価格・手順が公開されているか。5年後の出費が読める
  4. ふだんの電圧が不安定ならラインインタラクティブ、そうでなければ常時商用給電で足りる

そして、UPSは5年ごとに買い替える消耗品だと見積もっておくこと。これを先に知っておくだけで、選び方も、置き場所も変わります。

出典:オムロン ソーシアルソリューションズ「BY120S/BY80S/BY50S/BY35S 仕様」「BYB50S 製品情報」/シュナイダーエレクトリック「BR550S-JP 製品ページ」(いずれも2026年8月時点でメーカーが公表している値)。価格は変動します。
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